主要提案事項(国会での公述内容を含む)

①大手行を対象とする公的資金注入を提案し法制化された(1998年11月)

1998年の平成金融危機に際して大手銀行に公的資金投入案を提示、同年10月に「金融機能早期健全化法」(資金枠25兆円)として法制化された。
資料①1998年7月9日の朝日新聞「21世紀の対立軸」
資料②1998年8月25日の日本経済新聞「経済教室」
これが金融機能早期健全化法として法制化された(資金枠25兆円)
同年8月27日に自民党内の研究会「日本再生会議」(中山太郎議長、亀井静香代行、麻生太郎代行、平沼赳夫幹事長)で新聞記事をもとにして大手行を対象とする公的資金注入によって不良債権処理と金融システム安定化のためには大手行を対象とする公的資金の注入が不可欠であるとし、具体的な方法を提案した。これを受けて日本再生会議は、公的資金注入案(資金枠25兆円)を野中弘務官房長官(金融問題担当)に提示し、同官房長官の即決で公的資金注入による金融安定化政策を発表した。これによって株式市場が落ち着きを示し、1998年10月に「金融機能早期健全化法(資金枠25兆円)」として法制化された。
資料『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』(ダイヤモンド社、2007年、第4章「平成緊急恐慌を混乱させた新自由主義者」)

②銀行本体での株式保有禁止を提案し具体化した

(1)2001年2月の衆議院予算委員会の公聴会で、「不良債権とともに金融不安を拡大させた要因は銀行が本体で多額の株式を保有し、株価の下落で自己資本が減少することにある、そこで銀行本体での株式保有を禁止し、当面の処理として銀行持ち株会社銀行を設立して傘下に株式保有会社を作り、銀行が保有している株式をすべてそこへ移管することによって銀行保有株式を銀行本体から切り離すことを提案した。同年6月に私が面会した自民党の池田行彦政調会長はこの案に賛意を示したが、全国銀行協会会長の岸曉(三菱銀行頭取)が反対し、大蔵省の妥協案で「銀行の自己資本のうちTIERⅠ資本の範囲内」として法制化された。
資料①2001年2月の衆議院予算員会公聴会の公述人として提案
資料②『実感ない景気回復に潜む金融恐慌の罠(第4章-8)』
(2)「大銀行の破綻防げ」「銀行の全保有株式買い上げを」――主張ポイント:公的資金投入大胆に・銀行は企業再生に責任をーー読売新聞1面(2002年10月18日)
「直言デフレ脱出」の連載記事②で、竹中経済財政・金融相が「巨大銀行も大きすぎてつぶせないとは思はない」と発言したことは、「かえって金融不安を助長し、デフレを促進する」と反論し、1930年代の米国金融恐慌の教訓を述べ、さらに銀行の株式保有の制限など銀行の経営体質の修正を求めた。

資料「大銀行の破綻防げ」「銀行の全保有株式買い上げを」――主張ポイント:公的資金投入大胆に・銀行は企業再生に責任をーー読売新聞1面(2002年10月18日)

③政府債務を「粗債務」と「純債務」に分けて把握し、「純債務」でえみれば日本政府の債務の実態は、財務省公表の半分であることを実証的に説明し、「日本は財政危機ではない」「財政危機を誇張して緊縮政策を採るから債務はさらに増える。日本は政策が間違っており、「財政危機ではなく政策危機である」と提言し、日本の財政の実態を国民に示した。この考えはかなり広く理解されている。

私はこの提案を2001年2月の衆議院予算委員会公聴会と3月の参議院予算員会公聴会で説明した。「粗債務」は中央政府の「総借入」であり、「純債務」は「粗債務」から政府が保有する「金融資産(対内外金融債権、外貨準備、年金資産等)」を控除したネットの債務をいう。
その後、私は『週刊ダイヤモンド、2001年3月10日』と『増税が日本を破壊する』(ダイヤモンド社、2005年)で体系的に説明した。これを契機に世論の政府債務に対する見方が変り、日本の債務の実態を正確に見ようとする見解が広まってきた。
「資料」
資料①2000年2月の衆議院予算委員会と同年3月の参議院予算委員会で公述人として説明。
資料②週刊ダイヤモンド「純債務でみた日本の債務問題――決して財政は危機的ではない『週刊ダイヤモンド、2001年3月10日』へ寄稿
資料③拙著『増税が日本を破壊するーー本当は財政危機でないこれだけの理由』(ダイヤモンド社 2005年)

④小泉構造改革が新自由主義というイデオロギーによる日本改造計画であることを具体的に説明。日本経済の低迷を脱するには新自由主義政策から脱却する必要性を論じ具体的な政策を提示。

2001年4月に就任した小泉純一郎首相の「構造改革」が、英米で採用されている新自由主義というイデオロギーに基づく改革(新自由主義革命)であり、この流れが安倍晋三第2次内閣以降の政策(アベノミクス)であることを体系的に説明し、日本経済の長期低迷の原因を分析。これによって、21世紀に入ってからの日本経済の低迷が新自由主義という魔物によるものであることが広く理解させるようになってきた。
資料①『そして日本の富は略奪されるーーアメリカが仕掛けた新自由主義の正体』(ダイヤモンド社、2014年)
資料②『新自由主義の自滅――日本・アメリカ・韓国』(文春新書、2015年)

⑤消費税増税を回避し、消費税に代わる財源の調達を提案

日本は世界一の債権国であって、世界一、財源が豊富な国である。国土強靭化政策と国土刷新計画によって、公共投資を増加して民間投資を誘引して行けば、経済成長による税収で社会保障を充実することができる。拙著「消費税はゼロ%にすることができる」(ダイヤモンド社2009年)、「日本を滅ぼす消費税増税」(講談社新書2011年)。

⑥5年100兆円の国土刷新計画を提案(衆議院予算委員会)

2014年2月の衆議院予算委員会で「5年100兆円の国土刷新計画」を提案、財源は消費税増税に頼らずに法人税は引き上げる、ただし、条件付き投資減税(国内に設備投資を実行し正規社員を増やせば相応の減税)を提案。二階俊博予算委員長は委員会閉会後、私に「とてもいい案だ」といって握手を求められていた。
資料①2014年2月、衆議院予算委員会公聴会での提案
資料②『新自由主義の自滅』(文春新書2015年、終章)

⑦21世紀を生き抜く日本の国家観を提示(「永世平和国家宣言」をせよ)

安倍第2次内閣は2014年7月1日に、「憲法第9条は集団的自衛権の行使を容認していない」という日本政府の長年の見解を強引に変更して「日本は集団的自衛権行使を容認できる」と閣議決定し、同年9月19日に新安全保障法を成立させた。これによって日本の自衛隊は米軍の後方部隊として日本から相手を攻撃する道が開けた。
2017年4月27日に、米国の空母カール・ビンソンが北朝鮮に向けてフィリピン沖を公開しているときに、両脇に日本の海上自衛隊が護衛している写真がNHKテレビで放映された。これによって、北朝鮮は「日本が米軍と一緒になって北朝鮮を攻撃するのであれば、北朝鮮は日本を攻撃する」と宣言し、8月29日に北海道の襟裳岬近郊を通過するミサイル実験を行なった。この事実は「集団的自衛権容認で犠牲になるのは日本」であることが立証されたのである。
さらに米中の覇権争いが表面化してきた現在、地政学的見地から日本は米国一辺倒外交では孤立するだけである。どのようにして生き残るか。
資料『使ってはいけない集団的自衛権、トランプを見誤るな』(角川新書、2018年、終章「21世紀を生き抜く日本の国家観」)

⑧「衆参両院予算委員会での公述内容」

(1)2001年2月27日、衆議院予算委員会公聴会、3月15日、参議院予算員会公聴会
衆議院予算委員会では銀行本体での株式保有の禁止を提案し、参議院予算員会では具体案を提示した。その案では「銀行持ち株会社を作ってその傘下の銀行本体では株式保有を禁止し、同じ傘下に証券保有会社を設立して株式を保有させる」を骨子とした。結局、銀行本体での株式保有を「自己資本のうちのTIERⅠ資本の範囲内にする」ことで成案された「本項の②」参照。

(2)2002年2月27日 衆議院予算委員会公聴会
小泉構造改革が始まったときであり、すでにデフレが進んでいる日本で緊縮財政を採ると財政赤字が拡大することを警告した。

(3)2006年2月27日、衆議院予算委員会公聴会
財政危機を強調して「小さい政府」にしようとする小泉構造改革では、日本はデフレが一段と進む。純債務でみれば日本は財政危機ではない。米国のクリントン元大統領は、積極財政(財政支出の前年増加率を予想物価上昇率よりも高くする)と公共投資・投資減税で財政赤字を5年で解消させ、年3-4%の経済成長を成し遂げた。日本はこの政策を参考にすべきであると提言した。

(4)2008年2月、衆議院予算委員会公聴会
構造改革が日本の社会経済システムを破壊している(戦後最大の経済危機)。規制緩和がかえって国民の所得を減らし、非正規社員を増加させている。緊縮財政で小さい政府を目標としていることがデフレを促進して税収が減り、民間投資も減っている。政策の全面的な転換が望ましい。
(5)2010年2月、衆議院予算公聴会
2009年9月に民主・社民・国民新党の連立政権が成立した。鳩山首相・小沢幹事長のもとで2010年度予算が組成されたが、2008年9月のりーマンショックの影響で日本経済は極端に落ち込み、税収が激減し、日本はもはや平成恐慌と言えるほど大不況になった。昭和恐慌も米国大恐慌も財政主導で経済を救済している。戦後では1993年からの米国経済の復活もクリントン大統領の財政主導政策(積極財政で予算支出を増やし増加分を上回る政府投資を実行)で危機を脱した。日本もこの政策を採るべきであると提言した。

(6)2011年3月 参議院予算委員会公聴会
2010年5月に鳩山首相が辞任後に就任した菅直人首相は、最初の閣議で鳩山首相が拒否してきた「2020年にプライマリーバランスを均衡させる」という財務省の要求を決定したため、デフレが一段と進んだ(20⒑年のGDPデフレーターは過去最高のマイナス)。こうした状況を打開するには公共投資による需要創設と投資減税による民間投資の喚起をすべきであると所見を述べた。
(7)2014年2月、衆議院予算委員会公聴会
2012年12月の衆議院選挙で自民・公明連立政権が成立した。安倍内閣はデフレ解消を政策目標に掲げたが、「不十分である」と考えたので、「デフレは一段と進んでいるので、5年100兆円の国土刷新計画が必要である」と提案、「財源は消費税増税に頼らずに法人税は引き上げる、ただし、条件付き投資減税(国内に設備投資を実行し正規社員を増やせば相応の減税)」を提案した。二階俊博予算委員長からは委員会閉会後、私に「とてもいい案だ」といって握手を求められた。第1項-(5)。