主要論文と論述

1、「第2章 財政と格差問題」(『格差社会を越えて』東京大学出版会、宇沢弘文・橘木俊詔・内山勝久[編]、2012年)
(概要)所得格差がベースとなって社会生活で格差を引き起こす最大の要因は雇用形態と法人税と所得税の税率である。また経済を成長させて成長の配分が格差に関係する。「1億総中流」と言われた1980年頃の日本では非正規社員が特殊業務に限定されていたのに、現在では非正規社員が40数%に上昇している現状の問題点と解決方法を説明した(某大学の大学院の試験問題として利用された)。
資料『格差社会を越えて』東京大学出版会、宇沢弘文・橘木俊詔・内山勝久[編]、2012年

2、「偽装財政危機が招いた平成恐慌――財政呪縛から脱却し我々の預貯金を日本のために使うーー」(学士会報881号、2010年03月)
(概要)政府の債務の把握する方法は、「粗債務」(国債発行等による借入総額)と「純債務」(粗債務から政府が保有する金融資産、外貨準備金・政府系金融機関への貸出債権・年金フアンド等を控除した債務)があり、政府債務が1000兆円と言っても純債務でみると半分である。また日本は世界一に債権国であり、小泉構造改革以降の日本はデフレで余ったマネーは海外に流失している。日本は投資不足がデフレの一因であるので、日本人の預貯金を政府が国土刷新計画といった長期計画で樹立して民間投資を誘発して、景気振興策を展開して行くことが望ましい。
(資料)英文に翻訳し、海外の経済学者に発信した。

資料「偽装財政危機が招いた平成恐慌――財政呪縛から脱却し我々の預貯金を日本のために使うーー」(学士会報881号、2010年03月)

3、BIS規制(国際決済銀行での大手銀行に対する申し合わせ事項)への提言
(1)「この人に このテーマ」『朝日新聞』1999年7月28日
資料「BIS規制の見直し――信用収縮招かぬ改革をー(朝日新聞記者が取材)
(2)「日本型金融システム再構築を」――新BIS規制対策を明示――『金融ビジネス1999年9月号』、東洋経済新報社
(3)「BIS規制への戦略的対応」--『金融ビジネス』2001年4月号
ともに当初のBIS規制と改定BIS規制の内容を詳細に説明し、BIS規制が「自己資本本位制」と言うべき通貨供給システムであること、また、日本がいかに大きな影響を受けたか、それをどのようにして克服して行くべきか、について、総合的にまとめた。BIS規制の決定版となった。

4、『日本経済新聞』の「経済教室」への寄稿
(1)「銀行経営、抜本的見直しを」「株・不動産と遮断、自己資本から含み益除去」1995年12月18日
(概要)日本の銀行は多額の株式を保有しており、「その含み益の45%を自己資本に組み入れている」から、株価の変動で貸出限度額が上下する。これでは銀行の持つ信用創造機能を左右するので、銀行の保有を制限し、所有不動産などの時価評価と毎期償却、大口預金規制、金融持ち株会社によるリスクと責任の明確化が必要です。
(2)「銀行の株式保有に制限を」「改革が寡占を招く」「株価急落で信用創造減退」(1997年1月14日)
(概要)日本の銀行は無制限な株式保有を認められており、株価の変動で自己資本が変動するので、これが銀行の信用創造機能を不安定にしている。早急に銀行の株式保有を制限し、いずれは禁止すべきである。そのためには、証券会社や企業の協力も必要だ。
(3)「不良債権問題、大手行対応に“緊急法”を」「公的資金に規律」「不良行整理は政府主導で」1998年8月25日――その後、「破綻前金融機関への公的資金による資本注入の資金枠25兆円を提示し、「金融機関早期健全化緊急措置法」が成立した(1998年10月)。
(本稿「Ⅱ 主要提案事項」-1参照)。
5、『文藝春秋』への寄稿
(1)「サラリーマン増税の嘘を暴くーー危機を煽る財務省に騙されるな」(2006年3月号) 拙著「増税が日本を破壊する」を上梓したのちに、「純債務でみれば日本の実質債務は半分であり、財政危機ではなく、増税の必要はない。日本は世界一の金持ち国家であるので、そのカネを日本のために使えば景気が良くなり、税収が上がる。増税の必要はない」旨、説明した。
(2)「大増税が医療・年金を破壊するーー財政危機は嘘だ。世界一の医療を守るにはーー」
(2008年2月)、政府は財政支出をカットし、年金拠出金の積み増し、医療費カットを強行する。しかし、財政危機は偽りであり、デフレを解消させる政策を採れば、年金・医療は救われる。
(3)「“内需創出国債”100兆円を発行せよーーもはや平成恐慌、泥沼から脱出する唯一の方策は?」(2009年5月号)――英訳して海外へ発信した(7項ー(2)へ)
(4)「浜田宏一君、内閣参与を辞任せよーー金融だけでデフレ解消が不可能なのは最初から分かっていた」(2017年3月号)
6、週刊『エコノミスト』(毎日新聞社出版)へ寄稿
(1)「とことん考える消費税」(13)“反 対”――2012年5月29日
――デフレ下での大増税は恐慌を招く、「純債務」でみれば日本は財政危機ではない。積極財政でデフレを解消すべきだ。法人税と所得税の増収で消費税増税は不要だ。
(2)「日本農業は過小保護、農林中金の利益が必要」(2016年5月30日)
小泉進次郎氏(自民党)は「日本農業は過大保護・農中はいらないというが、主要国と比較して日本農業は過少保護であり、主要国どこでも農業金融で得られた収益を農業に使っている」ので、同氏の発言は事実に反することを、実証的に説明。マスコミで「目から鱗」と評価された。
(3)「出口の迷路 金融政策を問う⑪、投機に流れるマネーを成長投資に」(2017年12月19日)

黒田日銀総裁が異次元の金融緩和と叫んで増加させたマネタリーベースのマネー(日銀券と日銀にある金融機関の当座預金の合計)は、半分しか国内に残らず、半分は海外の投機業者へ流れている。この海外へ流失するマネーを日本の国債で吸収して国内の社会資本の充実に使うべきだと提言。
7、海外への発表論文(英文)
(1)2006年9月 国際通貨としてのユーロの現状と将来――-その1(ユーロ加盟後のドイツとイタリーがどのような影響を受けたか)――英訳して海外へ発信
(2)“内需創出国債”100兆円を発行せよーーもはや平成恐慌、泥沼から脱出する唯一の方策は?」(2009年5月号)
(3)2006年2月27日 衆議院予算員会での公述
(4)「債務700兆円の嘘」ー月刊『VOICE』2005年3月号

8、研究テーマ別論文――『月刊資本市場』への寄稿論文
A「利益相反」の研究
(1)1998年10月号  利益相反と金融システム(上)
-弊害が多い銀行の株式保有 グローバル・スタンダードに反する
(2)1998年11月号  利益相反と金融システム(下)
B「東アジア通貨危機とその後の対応」の研究――タイと韓国
*以下、2001年9月―02年1月号(3-7、第1回から第5回)
「東アジア通貨危機とその後の状況の研究」(2001年9月―02年1月連載)
――1997-98年の東アジア通貨危機と国内金融システムの崩壊・再建の分析――原 信文京女子大学名誉教授と共著。原教授とともに2000年9月に韓国とタイを訪問し、政府・中銀・大学教授・研究所・銀行首脳等から意見を拝聴した。こうした現地調査の上、1997-99年の通貨危機の影響とそれが国内金融システム不安を引起した理由、その解決に向かってどのような対策をとってきているか、日本にとって参考になる点は何かを論じた。
これらの論文はマスコミ、学会、研究者の間で参考資料として広く読まれた。今後、不良債権問題解決の手法として、参考になるであろう。(1)から(4)は原・菊池共著。
(3)2001年09月号   崩壊した金融システムをどのようにして立て直しつつあるか
――-通貨危機後の韓国・タイの再生努力と我が国に対する示唆
(第1回)韓国における通貨危機発生とその調整の過程
(4)2001年10月 同上(第2回)韓国における国内金融システムの崩壊と再構築の状況
(5)2001年11月 〃 (第3回) タイにおける通貨危機以後の対外面の調整
(6)2001年12月 〃 (第4回) タイにおける国内金融システムの崩壊と再構築の状況
(7)2002年1月;菊池英博著
(第5回) 国際通貨システムと国内金融システムの望ましい関係
C 「日本の金融安定化政策」
(8)2002年2月;日本の金融不安を如何にして解消するかー混乱と混迷からの脱却方法-

D 「東アジア通貨危機の研究――マレーシアとインドネシア」
(9)2003年6月;マレーシアにおける金融システムの立て直し-その1- -日本への示唆-
(10)2003年6月、マレーシアにおける金融システムの立て直し-その2- -日本への示唆-
(11)2003年11月、インドネシアにおける金融システムの立て直し-その1- -日本への示唆-
(12)2003年12月、インドネシアにおける金融システムの立て直し-その2- -日本への示唆-

E 「ユーロの組成・現状・英国参加の可否」
(13)2006年9月、国際通貨としてのユーロの現状と将来――-その1(ユーロ加盟後のドイツとイタリーがどのような影響を受けたか)
(14)2008年6月、英ポンド・ユーロ・EUの将来(英国はユーロに加盟するか?)

「6」新聞・経済誌等への寄稿
「1998年」
1、「公的資金投入のビジョンを問う」『朝日新聞』「論壇」1998年3月18日、―1998年3月の公的資金注入の問題点と公的資金により銀行の金融機能を回復させる方法を提言――
2、「公的資金で ”銀行デフレ”を一掃せよ」『論争東洋経済』1998年7月―現下のデフレ・スパイラルの引き金を引いたのは銀行の株式保有である。銀行保有株式の減額分を公的資金で補充すべしーー
3、「梶山私案・トータルプランの構造的欠陥」『金融ビジネス』1998年8月号(東洋経済新報社)ー公的資金注入による金融システム立て直し案(菊池案、これが具体化した)

4、「21世紀の対立軸、外科手術で再編強制」『朝日新聞』経済欄1998年7月9日――現在は金融危機だ、政府が介入して公的資金で市場を安定させ、公的資金を注入して再編を促進すれば、いずれ公的資金はプレミアム付きで戻る

5、「不良債権問題、大手行対応に“緊急法”を、公的資金に規律、不良行整理は政府主導で」――「経済教室」『日本経済新聞社』1998年8月25日――その後、「破綻前金融機関への公的資金による資本注入の資金枠25兆円を提示「金融機関早期健全化緊急措置法」が成立した(1998年10月、本稿「Ⅱ 主要提案事項ー1」参照)。
「1999年」
6、1999年「公的資金投入基準の再検討を」『金融ビジネス』1999年2月号ーー1999年3月末の公的資金注入基準と25兆円の内訳を説明――
ここで説明した資金枠25兆円の根拠は『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠――平成金融危機』(ダイヤモンド社、2007年、第4章「平成緊急恐慌を混乱させた新自由主義者」)に掲載されている。
「2000年」
7、「公的資金注入の規律守れ」『朝日新聞3月21日、論壇』
「2001年」
8、「純債務で見れば財政支出余力は十分あるーー主要国にない日本型モデル」、『週刊ダイヤモンド、3月10日号』ダイヤモンド(株)、(2月27日衆議院と3月15日参議院の予算公聴会での公述内容)
9、「銀行の株式保有問題――政府保証21兆円で株式を切り離せ」『金融ビジネス、10月号』
10、「財政呪縛から脱してデフレ阻止に全力をーー純債務で見た日本の財政を説明、緊縮財政は財政赤字を拡大する」――『正論』(産経新聞社)12月号
「2002年」
11、「財政デフレが不安を加速、金融安定化政策を確立せよ」『金融ビジネス、6月号』――緊縮財政で株価暴落、金融不安が再燃、その対策を提案――緊縮財政のもとで定期預金だけにペイオフを実行したため、信用収縮は地方経済に広がり、急速に実体経済が萎縮し、マイナス成長に陥っている。金融システム安定化政策が必要である。
12、「小泉緊縮財政は諸悪の根源、財政支出でデフレ退治せよ」『週刊ダイヤモンド、7月6日号』――2月27日の衆議院予算公聴会で公述せる内容――
13、「直言 デフレ脱出」『読売新聞1面』2002年10月18日、「大銀行の破綻防げ」デフレが深刻化する緊急時に「大銀行の破綻は防ぐべきである」と1930年のアメリカの歴史的教訓から説明し、金融システム安定化政策の重要性を強調(「1」-1-(3))。
14、「グローバリズムの盲従は国を滅ぼす」『金融ビジネス』2002年12月号)。――日本経済の混乱と混迷。その原因は現状に合致しない市場原理主義とグローバリズムという大きな罠にはまっているからだ、として、グローバリズム的発想が国益に合っているかどうか、よく斟酌してから、導入の可否を考えるべきであると指摘。減損・時価会計は無期限延期を提案――
「2003年」
15、「時価会計、即刻停止を」、『読売新聞4月12日』
16、「経済改革という名の破壊」、「論点」『読売新聞10月10日』
17、「グローバリズムへの盲従は国を滅ぼす」『金融ビジネス、12月号』
18、「緊縮財政と竹中プランがデフレを加速」『時事評論』12月号、時事通信社「外交知識普及会」発行。
「2004年」
19、「竹中プランは理念も手法も誤りだ」『金融ビジネス3月号』
20、「(ペイオフ)無期限延期で不安鎮めよ」『日経金融新聞』4月7日―ペイオフと自己資本比率規制を基本とする政策は国状に適合しないー
21、「景気浮上の陰で衰弱する日本の経済力」『世界週報6月1日号』時事通信社
「2005年」
「文京学院大学論文集への寄稿(主要分のみ)」
1995年「日本の金融システム再構築への提案」『文京女子大学経営学部論文集1995』――1990年代日本の金融システ不安の原因と公的資金注入を提案――
1996年 「銀行の株式保有禁止と金融持ち株会社」『文京女子大学経営学部論文集1996-―銀行本体での株式保有の弊害と持ち株会社による組織再編――
1999年、「信用創造・信用収縮と金融システム」『文京女子大学経営学部論文集1999』――1990年代の日本で発生した信用収縮の原因を分析――
2000年、「極めて不十分な日本の金融システム改革」―21世紀初頭への課題と解決方法ー『文京女子大学経営学部論文集2000』
2001年「新BIS規制に対する日本の戦略的対応」――BIS規制呪縛からの解放――『文京学院大学経営学部論文集2001』
2002年「国際的金融安定化政策はどうあるべきか――国内均衡と国際均衡の同時達成が必要」――『文京学院大学経営学部論文集2002』
アジアの通貨危機、IMF勧告で、国内金融システム再構築のベースとして、自己資本比率規制を導入した。自己資本比率規制は、「自己資本本位制」であり、新しい通貨供給システムという認識をもつべきであると認識して、国際的金融安定化政策のあるべき方針をした。

「7」その他
「文京学院大学時代」
1) 文京学院大学経営学部論集――菊池英博教授退任記念号
(2) 最終講義(経営学部学生向け)2007年1月
① 常に「正義を探求する人であれ」――絶対的な「正義」は必ずある。
② 必ず「選挙に行け」、選挙に行かない国民は民主主義国家に住む資格がない。
③ よき家庭、マイホムを築け、ベースキャンプがあってこそ良い仕事ができる。

(3)大学院での最終講義
現在の日本が直面している政治的経済的、さらに社会的混乱が、海外からの大きな流れに左右されていることをしっかり認識して、一社会人として行動してほしい。

「東京銀行時代」
① 豪州東京銀行――写真 オセアニア総支配人・豪州東京銀行会長兼頭取

② Bank of Tokyo follows Japanese Success stories――THE BUSINESS AUSTRALIAN , Wednesday April 3, 1991――

連絡先
日本金融財政研究所所長、教授、経済学者
菊池 英博(きくち 英博)

Mail:17kikuchi@mse.biglobe.ne.jp